目の前の大きな姿見に、自分の様相がありのままに映る。
サイドに編み込みをいれてよそ行きの雰囲気をまとわせ、普段はしないグロスも、本当にうすーーーくだけ引いてみたり、しちゃって。
今まで溜めていくだけだったティーンズ雑誌の出番が来たとばかりに、あっちがいいかいやこっちのがいいかと前日まで色々練習してきたかいがあった。
……変じゃ、ないよね。
張り切りすぎ、とか思われないかな。
ほんの少しの不安と期待に胸を揺らしつつ、視線を自分の周りに移して、思わず、発狂しかける。
まるで嵐が通過した後のようなありさまの部屋の、なんと酷いことか。
積み上げられた雑誌は床に散らばり、なけなしのアクセサリー(結局付けなかった)はあっちへこっちへ泣き別れ状態だ。
ベッドの上に乱雑に放られたままのワンピースにいたっては、早くも皺になってきてしまっている。
わりとお気に入りのやつだったのに!
血の気が引き、昨夜興奮を抑えきれなかった自分を今全力で呪いたくなった。
と、サイドテーブルに置いていたスマホがブブッ、と細かく揺れ、慌てて飛びつく。
「やば、今何時っ!?」
先走る指をもどかしく思いながらロックを解除する。
先週やり取りした時以来の遊馬くんとのトーク画面が現れるなり、再びぽこんと新着のメッセージが。
――おはよう。元気?
――楽しみだね。今日はよろしく!
ぺこりとお行儀よくお辞儀をするワニのスタンプが続けて送られてきて、私はおのずと笑みをこぼした。
遊園地に行こうってすぐに誘ってくれたから、てっきりムードメーカー的な立ち位置の人物だとばかり思っていたけど。
こうやって、礼儀正しいとことか、ちょっとした気遣いができるとことか、少し、尊敬してしまう。
私は『私の方こそよろしくお願いします!』と返信を打ち、――はたと動きを止める。
確か遊馬くん、双星くんも一緒だって言ってたよな。
ん?
ちょっと待て。
こ、これってもしや、デデデデデートというやつなのでは!?
「休日に男子と出掛ける」イコール「デート」思考の私には、この刺激は心臓に悪い……っ!
ああ経験が少ないって哀しい、と嘆きつつ、時計の針をみとめた私は慌ただしく準備を再開したのでした。