「 “隣町に新しいショッピングモール !” だってさー」
「へーぇ……」




 いつもとなんら変わらないお昼休み。



 お弁当の肉団子を突っつきながら、心ここにあらずな私。

 ぼんやり遠くを見つめていたら、ついに知世から「はあぁ」と深いため息が。




「……聞いてる?絶対聞いてませんよね、初華(いちか)サン」
「うー……ん」
「あのねぇ!」




 いつもより豪快に、ワイルドにメロンパンにかぶりついて、知世は若干興奮気味なご様子。



「あんた、ほんと昨日っからどうしちゃったのよ!何言っても空返事。授業中だってずぅっと上の空だし」



 そういえば、今日は特に午前中の記憶がないなぁ。どおりでぼんやりするわけだ。


 私はあむ、と肉団子を口に入れようと無意識に手を動かす。
 と、うっかり箸を滑らせて肉団子が弁当箱に落下っ。

 ぼとっ。


 

「――ハッ!わ、私は、一体何を……」
「おかえりーあっち(・・・)の世界から」




 ひ、人が我に返った途端なんてことを言うんだ……と呆れる私を見て、またも呆れる知世。

 いそいそと摘みなおした肉団子を口いっぱいに感じつつ、ようやく会話に意識を戻す。




「ごめんごめん。何だっけ、ショッピングモール?」
「ん。けっこーでかいんだってさ」
「あー、確かこの前新聞にちょこっと載ってた」




 〇〇駅から徒歩5分!目指すは一種の「テーマパーク」。

 新聞のでかでかとした大見出しがだんだんと蘇ってくる……、





「明日、部活のメンバーでそこ行くんだけどさぁ」

「ねーねー!昨日の双星くん(・・・・)、見たっ?」





 知世が、どことなく気だるげに美術部の約束について話し出そうとしたとき。

 向こうのグループの方から、やけに大きめの声が耳に割り込んでくる。




結愛(ゆあ)、昨日の見てたの?」
「んふふ〜。リアルタイムで、ね」
「立ち姿も完璧だったよねぇ」





 いわゆる “ 一軍女子 ” たちの会話だと理解して、知世がパンをついばみながらケッと言わんばかりに眉をひそめる。




「稀にストーカー気味な女子っているよねー」
「……やば」




 もうお弁当どころじゃなくて、カタリと箸を置く。

 一気に血色が悪くなった私に、知世の怪訝な視線が向けられたのと同時。