ーー配属されてからの一年は、あっという間だった。

私は湯気を立てる白いマグカップを見つめながら、ため息を吐く。
ちなみに、加賀見係長は朝礼もそこそこに出かけて行ってしまった。相変わらずである。


初めて会ったあの朝から、何度話せただろう。

こうして早起きを頑張ってみても会える確率は五分五分だ。出勤しては一喜一憂を繰り返す日々はまるで、毎朝情報番組でやっている星占いみたい。

気になり過ぎて仕事に身が入らない、なんていうことはさすがに無いけれど、すっかりレアキャラが定着してしまった加賀見係長に会えるように、願わくば何とか視界に入るように行動している自分がいる。

姿を見かけるだけで嬉しくなって、運良く今朝みたいに冗談を言ったり他愛もない世間話が出来ると胸の奥がじんわり温かくなって……。
そう。恐ろしいことに、しっかり自覚はあるのだ。

最初は“葉山さん”だった呼び名が、ごく自然なタイミングで“葉山”に移行したことに気付いて悶えそうになったこととか。

ただ雑談で終わるだけではなくて、さりげなく仕事の残作業を確認してくれる仕草とか。


彼への興味が好意に変わっていたことに気付いたのは、彼の行動のひとつひとつが私の心を緩く締め付けるようになったからだ。


私は、加賀見係長に恋をしている。