「ねえ、一人なんでしょ?こんなに可愛いのに、勿体ないなあ」
「い、いや、今日はただの下見で・・・」
 
 筑紫町夏祭り、中央会場。
 一日目とはいえ、既にかなり人通りの多い、立ち並ぶ出店と出店の間の通路。
 けれど、まるで穴が開いたみたいに人が流れて居ない場所がある。
 悲しいことに、私の周りだった。
 というかあくまで私達の周り、なんだろう。
 私たち――一まとめにしたくもないんだけど、私と、20代であろうやたら体格だけは立派な、三人の男。ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべている。
 つまり私は今現在、この男どもに壮絶な嫌がらせを受けている。 
 
 一人の男が、私の腕に手を伸ばしてきた。思わず体ごと一歩後ずさるも、袖は軽く相手の手に触れる。
「なになに?怯えちゃってんの?ますます可愛いなあ・・・」
 更に気持ち悪くなってくる視線から逃げるように、首を背け流れていく人混みを見た。
 興味津々という表情でこっちを見ていた人たちも、慌てて目を背け、流れていく。
 助けてくれないことを責める気なんて無い。
 この祭りには去年もその前も来たけれど――いつだって、こういう奴らはいるものだ。
 それを見たとき、助けようなんて思わない。関わりたくない、そう思って逃げるのが当たり前。
 つまり私は・・・今日、運が悪かったってことなんだ。