ルージュが深く頭を下げノワールは自分の感情が憎しみから許しに変化するのを感じ、戸惑う。


『そこまで…律を』


『ああ。不思議だな...誰かを好きになるって』


ルージュが微笑む。


とても澄んだ、見たこともない笑顔だった。


『満月の夜、また身体を借りる…ノワール、今まで済まなかった。律が待っている…お前の気が向いたら会わせてくれ…頼む』


その言葉を最後にまたノワールは独りになった。


『ルージュ、お前本気で』

(律が好きなんだな)


今まで一緒だったからこそ分かる、本当にそう思っている事を。


なぜか涙が滲んでノワールは苦笑した。


『長かったな…お互いに』