「なあ」


階段を降りながら、用がある女子生徒に声をかける。しかし振り向きもしない。
近くに他の女子生徒が2人いる。そっちに用があるとでも思ってるのだろうか。


「なあってば」


階段を駆け下りて、肩を掴む。


「え……」


眼鏡をかけた彼女は、聞こえるか聞こえないかくらいの声量で、戸惑ったように声を出した。


「ちょっといいか?」

「…人気の無い所なら」

「分かった」


彼女を校舎裏へと連れて行く。向き合って立ち止まった。彼女はスクールバッグをギュッと握りながら俯いていて、目が合うことはない。


「単刀直入に言うわ。好きです、付き合ってください」


無駄なことは一切言わなかった。伝えたいことをただそのまま。


「ごめんなさい。あなたのことよく知らないので」


眼鏡をクイッと上げながらそう言って、足早に立ち去ってしまった。


「よく知らないってことないだろ…」


小中高と、ずっと同じ学校で同じクラスだ。それはもう、運命としか感じられないくらいに。