おともだち

 そうだよ、体臭はともかく顔に何かついてるくらいで毎回避けられるわけないだろう。毎日何かついてるほどうっかりしてないっての。

 この関係が気まずいとか大っぴらに出来ない事なんて今に始まったことじゃないのに。何だぁ?

 思いつくのは、多江がこの関係を終わらせたいって思ってる……とか?くらいだろうか。そうしたい何かがあったってことだろうか……。だったら()()()だって減るか無くなるかするはず。
 あー……全くわかんねぇ。わかんないけど、会社で確認する術もないわけで、そうなると、会った時に聞いてみるか。何か心境の変化でもあったのかって。

 迷走してる自覚はあって、多分そういう事じゃないだろうけど……。この日の帰り、マウスウォッシュとミントタブレット、それから良さそうなボディウォッシュを買って帰った。

 次に会う日はすでに決まっていた。
 ――週末。土曜。もちろん、多江からの誘いで、俺も快く頷いた。ここ最近の定番は平日どこかで気軽な食事をとって帰る。週末は昼くらいから会って、ちょっと出かけて家で飲む。

 未だ泊りはなしで、出かけるたって多江曰く『知り合いに会うと困る関係』(そうか?)だから、お互いの家の近所。もしくは少し離れた場所に()()()に行ったりする。

 お互いの家で酒入れてまったりする関係とは、それなりに親密にはなる。ただ、『セフレ』なんて提案した多江の方が受け身で、酔ったからと言って身体を寄せたりしなだれかかってきたりしない。俺が近づく程度。俺だって、手を繋ぐくらいしかしてない。

 ――正直キツイ。
 めちゃくちゃキツイ。部屋で好きな子とふたり。相手はほどよく酔っていて、ほどよく隙がある。

 そろそろ本当にキツイ。ほんとうに、キツイのよ。

 セフレを引き受けたって、その()の部分をする気はない、今はまだ……。でも、多江がそれでいいと思ってんのは何でだよ。最初は今日はいいかなって断ったけど、以降。向こうから()()()って言われても困るんだけど、何か、くっそう。いいのか、これで。