おともだち

「あー……でも、付き合いたてみたいな状況が続くのって楽しいよね」
「うん、ドキドキと初々しい感じね」
「そうそう、でもそれは付き合ってるから楽しいわけじゃん。相手も自分の事好きっていう信じられない気持ちでドキドキわくわくする。でもさ、今は向こうの気持ちがわからなくて純粋に楽しめないってことね? 」
「うんうん」
「セフレに気持ちいらないからね。マナーは必要だけど。向こうの気持ちが気になるってことは割り切れてないよ、多江、それ」
「うん、わかってる。私には恋人どころか、セフレも無理だってことだよね。考え過ぎちゃって」
「はは、違うって多江。わかんないかな、多江は、その人の事好きなんだよ」
「え……」

 言葉が出てこない私に、奈子は笑顔でうん、と頷いた。

「やっちゃう前に気づいてよかったじゃん。だって、やっちゃえばきっともっと好きになっちゃうよ。多江はそうだよ。結局、セフレとかそんなの無理で、ちゃんと恋人つくんなよ」
「いや、だって、私……」
「向いてないって判断できるほど恋愛経験ないっしょ。向こうも多江の事好きならちょうどいいじゃん。その3か月更新とやらで恋人に昇格したら? 」
「でも、私一人で決められることじゃ……」
「だから、話するんでしょ。向こうも多江の事好きじゃん。本来向こうは付き合う事を求めてたわけで。手を出さないのも気持ちがあるからってこと以外に考えられないっしょ。セフレなんて都合のいい関係で恋人みたいに扱ってくれるんだからさ」
「待って、そんなこと無いよ。あの時、私、すごい呆れられて。それに、向こうは、向こうは……何を考えてるかわからない……し……」
「何考えてるかわかんないのは向こうも同じじゃないの同僚にセフレ提案する女だよ。何考えてんだって」

 ここから、「でも」「だって」を繰り返し、私は奈子を呆れさせてしまった。
 でも、だって……。私が、栄司を好き……なんて。