おともだち

「OK! わかった。考え過ぎちゃうのは仁科さんの性分ってことで、仕方ないな。俺が都度、大丈夫って言うわ。あと、無理して楽しまなくてもいい。女子は気持ちのアップダウンあるだろうし。とにかく、都度! いい? 」
「うん、ありがと」

 私はぶんぶん顔を縦に振った。アップダウン。確かに宮沢くんといると小さなことで気持ちが直ぐに……嬉しくなったり虚しくなったり、彼の言動に一喜一憂……。

「ほら! また何か考えてるな? よし、じゃあ、もう一歩仲良くなれるようにしよっか」
「もう一歩……? 」
「そう。多江」
「! 」

 不意に下の名前で呼ばれ、肩がビクリとしてしまった。

「うん。で、俺も」
「俺も? 」

 宮沢くんは自分を指さし、にこりと笑った。

「え、っと……」
「うん」

 どうやら、私を試しているみたいだ。自分の下の名前を知っているかどうか。当然知っていて

「栄司」
 私は控えめに口にする。
「うん」

 宮沢くんは満足そうに頷いた。

「会社ではあんま接点ないから間違えて呼ぶ心配はないっしょ」
「まぁ、そうだね」
「そ。せっかくプライベートで会う関係になったんだから楽しもう」
「そうだね。けど、期間限定だし、あんまり仲良くなりすぎると、関係を解消した後どうなるんだろって思わない……って、あれ? 」

 宮沢くんは。怪訝な顔をして、それからすぐにふ、っと吹き出し、ついには笑ってしまった。

 そんな、声を出して笑わなくったってさ……。 

「多江、保守的だな。自分からセフレって言って来たくせに! 」

 全く、その通りだ。