おともだち

「ほら、私たちセフレじゃない? それなのに、こう昼間から動物園とか、そんな場所にいていいのかなって」
「ああ。一般的なセフレの事は知らない、俺は」
「うん。それは……私も、だけど……」
「うん。出会いは会社の同僚だし、飲み会で話すようになって、仁科さんと話すの好きなんだ、俺。またご飯行ったりしたいなって思ってたし」
「うん」

 それは、そうだ。告白、してくれた。

「その延長だよ。例えば、セフレになった瞬間、夜に会ってやるだけみたいになんの? それって、虚しくない? 」
「そうだけど、これじゃ……」

 これじゃ、普通のカップルだよ。そう言いかけて飲み込んだ。

「こんな時間は楽しくない? 」
「楽しい、すごく! だって動物園なんてすごく久しぶりで……。ふれあいコーナーとかすっごい癒された。私、ペットは飼えないから」
「じゃあ、いいんじゃない。誰にも迷惑かけてないし。俺たちが楽しければ」
「そう、だけど……」

 宮沢くんはパンッと手を打ち合わせた。

「まだ、始まったばっかだろ。お互い手探りで、居心地よくしてけばいいじゃん。無理なら気軽に断って、違う事したらいいんだし。そういう関係を望んだはずだって何度も言ってるだろ? 仁科さんは考えすぎ。とくに、俺は俺で楽しむし、俺の事まで考えてくれなくていいよ。存分に自己中発揮して」

 存分に自己中発揮してという言い方が面白くて、吹き出した。

「わかった。じゃあ、そうさせてもらう」

 違うよ、考えないようにしても考えちゃうんだよ。宮沢くん、何考えてるのかなぁって……。そんなこと、セフレの私は聞けないけど。