「人目を避けるにはドライブかなと思って」
宮沢くんは車で家の前まで迎えに来てくれた。初めて見る私服姿にドキリとする。いつもと違う人みたいだ。
半袖と長袖が混在する春の終わり。
真っ白なオープンシャツに、オフホワイトのパンツ。オールホワイトのコーデって着こなせる人いるんだ。爽やかにも、艶っぽくも見えて、どぎまぎする。見ちゃいけない気がして直視出来ない。眩しい。眩しいよ、車内が。
景色を見るにはまだ早くて、運転席も見れなくて、私はただ膝の上に乗せた鞄を握り締めて自分の足元を見ていた。滅多に履かないスニーカーが居心地悪く冴えない自分にもっと入念に準備をすべきだったのでは、と後悔していた。
「そういう、カジュアルな格好もいいね」
褒められるなんて思わなくて、私は顔を上げた。宮沢くんはごく自然に笑っていて、それはお世辞だとか、何か言わなきゃという会話の糸口ではなく本心だと伝わる言い方で私はカッと顔が熱くなるのを感じた。
「宮沢くんも、私服姿初めて見たけど、やっぱりかっこいいね」
宮沢くんは運転しながらふっと表情を緩めると、「ありがと」と言った。慣れているんだろうな、こうやって“かっこいいね”なんて言われるの。あと、自然に褒めてくれるのも。
「あ、そうだ。疲れない靴履いて来てって言うからスニーカーにしたんだけど、どこいくの? 」
「動物園。水族館と迷ったけど、いい季節だし動物園。水族館は雨の日とか、もっと暑くなってからでも、涼しくていいかなと思って。平坦な道だけど園内回ったら結構な距離になると思う。でも、疲れたら遠慮なく言って」
「はい」
「あと、トイレも」
「ふふふ、幼稚園の遠足じゃないんだから」
「気を使わずに、ってこと」
「うん。ありがとう」
優しいなあ、宮沢くん。
嬉しくなって、でも直ぐに心が陰った。気を使わないでという言葉は、私がそう望んだから、私だからだろうか。それとも、誰にでも言うのかな。例えばこれが恋人でも……。
コホ。まただ。またなぜか胸が痛くなった。
宮沢くんは車で家の前まで迎えに来てくれた。初めて見る私服姿にドキリとする。いつもと違う人みたいだ。
半袖と長袖が混在する春の終わり。
真っ白なオープンシャツに、オフホワイトのパンツ。オールホワイトのコーデって着こなせる人いるんだ。爽やかにも、艶っぽくも見えて、どぎまぎする。見ちゃいけない気がして直視出来ない。眩しい。眩しいよ、車内が。
景色を見るにはまだ早くて、運転席も見れなくて、私はただ膝の上に乗せた鞄を握り締めて自分の足元を見ていた。滅多に履かないスニーカーが居心地悪く冴えない自分にもっと入念に準備をすべきだったのでは、と後悔していた。
「そういう、カジュアルな格好もいいね」
褒められるなんて思わなくて、私は顔を上げた。宮沢くんはごく自然に笑っていて、それはお世辞だとか、何か言わなきゃという会話の糸口ではなく本心だと伝わる言い方で私はカッと顔が熱くなるのを感じた。
「宮沢くんも、私服姿初めて見たけど、やっぱりかっこいいね」
宮沢くんは運転しながらふっと表情を緩めると、「ありがと」と言った。慣れているんだろうな、こうやって“かっこいいね”なんて言われるの。あと、自然に褒めてくれるのも。
「あ、そうだ。疲れない靴履いて来てって言うからスニーカーにしたんだけど、どこいくの? 」
「動物園。水族館と迷ったけど、いい季節だし動物園。水族館は雨の日とか、もっと暑くなってからでも、涼しくていいかなと思って。平坦な道だけど園内回ったら結構な距離になると思う。でも、疲れたら遠慮なく言って」
「はい」
「あと、トイレも」
「ふふふ、幼稚園の遠足じゃないんだから」
「気を使わずに、ってこと」
「うん。ありがとう」
優しいなあ、宮沢くん。
嬉しくなって、でも直ぐに心が陰った。気を使わないでという言葉は、私がそう望んだから、私だからだろうか。それとも、誰にでも言うのかな。例えばこれが恋人でも……。
コホ。まただ。またなぜか胸が痛くなった。



