結局、週末の誘いも無かったな。

 2回の札を使い切って……スケジュールアプリを見ると、奇しくも明日じゃん。更新日――。まぁ、そういうことかな、とは思う。大人なんだから、はっきり言われなくても悟らないといけないんだろうな、とは思う。徐々に俺に悪くはない感情が芽生えていたのは事実だと思う。うぬぼれではなく。でも、急に感情が動くような相手に出会ってしまえばどうしようもない。わかってるさ、それでも足掻きたいと思うだろう。


 帰り際、総務の階はまだ人がいて忙しそうだった。
 忙しさから加賀美との約束はなくなるかもしれない、けど……俺が求めているのは一時的なキャンセルじゃない。

 スマホをポケットから取り出すと電源を落とした。簡単な一言で約束をない事にされたくなかった。街を少しうろついて時間をつぶした。

 多江の家に着くとはやる気持ちを抑えインターホンを押す。
 中からの反応はなく、オートロックは開く気配がない。

 まだ帰っていない。スマホを取り出すが、電源を切ったことを思い出し、またポケットへしまった。


 さすがにマンションの前で待つのは不審者感が強く、駅まで戻るとカフェへと入った。改札の人の流れが見える席へと着く。残業だとしても、もう会社を出る頃だ。腕時計を見て会社からの時間を逆算する。

 このくらいの時間には帰って来るだろう、加賀美との約束を優先しない限り――。

 
 駅に電車が到着する度、多江の姿を探した。だけど、予想した時間になっても多江の姿は無かった。