おともだち

「にしてもひどいメッセージだったわ」

 奈子はそう言って、私が発熱して奈子に助けを求めたメッセージを見せてきた。

「だって、意識朦朧としてたんだもん」
「はいはい、メッセージ送って来ただけでもえらいえらい。こういう時のためにお互い合鍵持ってるんっだもんね。ドアガード開ける元気はあったみたいでよかったよ」
「確かに、覚えてないけど」


 奈子はふふふと笑ったあと、思い出したようにスマホを見せて来た。ぱちぱちと瞬きして奈子の差し出した画面――写真を見た。


「そうそう、多江に報告しよっと思ってたんだよね。彼氏、出来たの」

 満面の笑みで奈子が言った。……彼氏。

「あ、彼氏!? 嘘!? 誰、おめでとう! すご、すごいな」

 あまりにも自分と縁遠くて彼氏の意味が一瞬わからなかった。

「あはは、何それ。ありがと。久しぶりの彼氏でちょっと浮かれてる」

 奈子は幸せそうに、でも私に遠慮してか緩んだ顔を引き締めようと鼻の穴を膨らませた。

「いいよ、浮かれて。話聞きたいよ。むしろ普通の恋愛がどうだったか思い出すためにも聞かせておくれよ」

 私が茶化すと奈子が吹き出した。

「おーけー。寝ながら聞いて。実は同僚なの」
「同僚!? 」

 思わず腹筋を使って上体を起こしてしまい、奈子に咎められてしまった。

「そう、しかも同じ部署。来年異動になるかもね」
「オープンにしてるの? 」
「いや、してないけど、隠すことでもないでしょ。喧嘩とか仕事に持ち込まないし。()()()()だしね。でないと同僚となんてつき合えないよ」

 
 それはそうだ、と天井を見ながら頷いた。