おともだち

「めっちゃハマってんじゃん、多江」
「……まぁ」

 熱まで出しといてそんな事ないとは言えずに濁した。

「その人、惚れさせるだけ惚れさせて手ひどく振るのが趣味なの? 」
「そそ……んなこと無いと思う。惚れさせなくてもモテるだろうし」
「だよね。わざわざ面倒くさいこと言ってる多江を相手にしなくても、性欲満たす相手も、恋人だってつくろうと思えばつくれる人なんでしょう? 」
「確かに」
「多江に振られたからってそんな手の込んだ復讐しないでしょ、暇じゃないんだし。少なからず、多江に好意があるからでしょ」

 振られた……。

「そっか、私……栄司を振ってるんだよね。でも栄司は私が変な提案したからもう冷めたのかなって。セフレなんていう女はもう恋愛対象に……」

 俯くと、パタパタと涙が零れた。

「多江、しんどい時に考えるとロクなことにならないから一旦ちゃんと治しな。あと、私はそんなこと無いと思うよ。だって、据え膳食わずにトモダチやってくれてるなんて優しい人じゃん」
「でも……付き合うのがしんどいからセフレとか言いながら好きになって独占したいとか虫が良すぎない? 栄司はモテるし。純粋に栄司を好きな人たちにもこんな動機で私と一緒にいるなんて申しわけなくて」
「あはは! また熱上がるわよ。そんなん、適当でいいじゃん。好きになっちゃったんだから。受け入れるかどうかは向こう次第だし、どう思うかはその栄司くんに聞いて! それしかないよ」
「……でも」
「ほら、寝ときな」

 奈子はそう言って私をベッドに沈めた。

「次熱でたら兄さんたち招集するからね」
「それは、嫌すぎる」
「考えても答え出ないことは考えないの。元気になってから」
「うん」

 寝すぎで全く眠れそうにないけど、奈子の言う通り考えたってしかたがない。