おともだち

 加賀美との約束が決まったら教えてって言った。
 決まったばかりなのかもしれないし、わざわざメッセージするのは憚られたのかもしれない。色々想像して擁護することはできる。俺に都合のいい解釈、かもしれない。でも……。


 ――この日、社内で偶然会った多江を呼び止めた。
 笑顔を交わす前、わずかに多江の顔が強張ったのを見過ごさなかった。苛立ちと焦りが感情的にさせる。たまたま誰かが通りかからなかったら、冷静でいられなかったかもしれない。はぁ、と息を吐く。久しぶりに多江の顔をちゃんと見た気がする。

「久しぶり、だな」
「そうだね。ごめんね。先週ちょっと体調崩してて」

 すっと周りをみまわし人気のない所へ移動した。

「もう、治ったんだ? 」

 多江の額に手を伸ばすと多江は身体を強張らせ、ぎゅっと目を閉じた。

「ごめん、怖がらせるつもりじゃ……。大丈夫ならそれで」

 上げた手は多江に触れることなく下ろした。嫌がられてんじゃん。ふう、と息を整える。多江に祈るような気持ちで尋ねた。

「なぁ、俺に言うことない? 」
「え、何? 」

 多江は全然ピンと来てないようだった。加賀美と会う報告、言う気はないんだろうか。それなら、いいよな、俺は加賀美との約束なんて()()()()んだから。

()()覚えてる? 2回だけ、俺の呼び出しにも応じてってやつ」

 あの時と同じ、指で2のピースをつくって多江に見せるとコクンと頷いた。

「今日、会ってくれない? 仕事終わってから」

 多江は目を見開いた。