おともだち

 りっかちゃんに言うのが正解かはわからない。けど、言っときたかったからいいか。

「やー、イケメンでも告白するんですね」
「りっかちゃん、面白い子だね。えっと健闘を祈る。いざとなれば加賀美にトーク画面見せなね」
「は? はい。さぁ。週末のためにお仕事! 頑張ります! 」
「……うん」

 あの情緒でこの後仕事出来るのか心配したけど、切り替えたのかキリっとした顔で去って行って大丈夫だろ。
 
 『俺と契約中は他のセフレは作らないで』とは言ったけど……。そうだ、言った。あの頃の記憶が蘇ってくる。俺が引き受けなきゃ、他の男が引き受けてたかもしれない『セフレ』
 サーッと血の気が引く。多江は本当はセフレとか向いてなくてちゃんと恋人作ったほうがいいと思うし、そう伝わるようにはしたつもりだった。俺たちの契約はもうすぐ終わって、この関係を恋人に――変えるつもりだった。

 ずっと片思いしてた加賀美が現れて恋心を思い出したとしたら。もしくは、それでも多江が誰かと付き合うことを望まなかった場合、俺との形上の『セフレ』契約を解除して()()()()()()セフレをつくるかもしれない。セフレ関係が終わっても俺みたいに同じ会社じゃないんだから、意図せず会って気まずい思いもしない。元々の気心も知れてる加賀美はどちらにしてもうってつけではないのか。そう気づいてしまった。


 全然有利でもない状況。

 長期戦、とか言ってる場合じゃなかったな。りっかちゃんでも思う通り、何でこのタイミングで現れるんだよ。毎週平日と週末に1日ずつ会っていた。当然、多江からの誘いで……。
 先週末の理由なきキャンセル。今週は平日の誘いがなかった。忙しいからだと思っていたが、金曜の今日になってもまだ週末の誘いは無い――。偶然か?加賀美に再会したタイミングで多江からの誘いがなくなるの、それって……偶然ではないんじゃないか。