おともだち

 でも、加賀美と多江の約束だって今朝りっかちゃんがメッセージするほんの数分前に決まったのかもしんないし?だいぶ朝早いな、とは思うけど。一概に責められないよな。いや、元々責める権利なんてないけど。誰と食事に行こうが多江の自由だ。俺が恋人でない限り。

「今度、食事に行くことになりました。()()()

 りっかちゃんは大層満足そうに俺に加賀美とのやり取りしたスマホ画面を見せて来た。……危うい子だな、この子。だけど、加賀美との同僚の域を出ないシンプルなやりとりに一喜一憂してる姿は微笑ましいものがあった。メッセージの背景はパステルピンクのいかにも意中の相手だとわかる状態で、これを加賀美に見せてやりたい気持ちになった。

 その画面を閉じるとりっかちゃんはまた眉を下げてため息を吐いた。

「でも、それも今日次第ですね。待つのしんどいな。私と会う時は彼女いるかもしれないんですよね。再会って縁がある気がしてほんと嫌……」

 加賀美とこの子が上手くいったら俺にとっても都合がいい。でも、人の気持ちを自分のために利用するのも違うよなぁ。

「同じ会社で働くっていうのも相当()があるんだと俺は思うけど」
「……そう、そうですよね! 」
「うん。頑張って」
「告白、何て言ったらいいでしょう」
「素直が一番! 」

 俺がそう言うと、りっかちゃんはこちらがドキリとするくらい可愛い笑顔を向けた。そう、それでいいんだよな、それで。

 店を出ると灼熱。でも、俺も黙ってさらわれてる場合じゃない。

「そうだ、りっかちゃん。俺も告白しようと思ってるんだ」
「誰にですか」
「……うちの仁科」
「はわぁあ」

 りっかちゃんの口から驚きの音が出た。

「うん」
「それ聞いて他力本願的な邪な感情が出て来そうですけど、別口で!純粋に! 応援しています! 」

 りっかちゃんは俺にも複雑な激励をくれた。まぁ、そうだよな。