おともだち

 加賀美くんが待たせていた後輩の女の子と合流し、お待たせして申し訳なかったなと一礼する。と同時にその子と一緒にいた男性が栄司、その人であることに気が付いた。


 ……栄司は、小柴さんたちと一緒に食事に行ったんじゃないの?何で?
 加賀美くんと話したおかげでいくらか軽くなった気持ちがまたすぐに沈んでくる。復讐、だとか。私もほかの子とかわらない存在だとか。加賀美くんの同僚とどうして一緒にいるのとか。一瞬で色んな疑問が浮んで、胸が痛い。栄司はかっこいいから、声をかけられたりしたのかな。テイクアウトに寄っただけって言ったけど、でも……、本当に?
「コーヒー、飲む? 」
 
 私の気も知らないで栄司は呑気に聞いてくる。何も考えてないんだろうなって仕草も顔も腹立たしいのに可愛くて。
 感情を押さえて押さえて。それでも醜い嫉妬心が口から出て来る。


「栄司は、今日は小柴さんたちとランチしたんじゃなかったの? 」
「……何で知ってんの」
「あ、その……私が外出る時に見えたからさ」
「うーん……何かあのノリについていけなくてさ。今度から行かないって言って先に帰ってきた。で、一人でコーヒーな。テイクアウトだけど」
「そっか。じゃあ、私が栄司と行けばよかったな」
「そうだね」

 感情が溢れて漏れて、コントロール出来ない。

「あの、さっきの、加賀美くんと一緒にいた女の子とは一緒にお茶したりしなかったの? 」

 挙句、栄司に焼きもちやいたのかと思った、などと言われてしまう。そうだよ、やきもちだよ。栄司の手から奪ったアイスコーヒーは冷たくて、少しもらうだけじゃ物足りない。

 栄司は自分の部署へと階段で戻って行った。物足りない。

 全然、物足りないんだよ。