おともだち

「俺、サンドイッチか何か食べようかな」
「ごめん、ご飯まだなのにカフェにつき合わせちゃって」
「いいよ、外回りだからお腹減ったら適当に食う」

 私も食欲がないだけで昼食はまだだった。空腹にコーヒーはどうだろうとスコーンを頼む。

「あれ、別腹? 」
 私のスコーンを見て、人懐こい笑顔を向ける。瞬時に懐かしい気持ちになる。胸がわずかに疼く。懐かしい、戻りたいような感情と、あの頃の加賀美くんを見つめていた私の古い恋心を思い出した……。

「うん。甘いものが欲しくなっちゃった」
 私も笑い返した。栄司の言葉がひっかかっていて引っ張られそうな感情を追いやる。久しぶりの再会なんだから楽しもう。

「飲みに行こうっての、なかなか日が合わないな。そりゃそうか、みんな社会人になってんだもんな。つか、メッセージでも言ったけど宮沢! 同じ会社とかすっごい偶然だよな」

 追いやっていた人の名前が出てきて、身体が跳ねてしまった。共通の知り合いだから話題に出て当然なのに。加賀美くんが一瞬不思議そうな顔をしたので慌てて取り繕う。
 

「うん、そうだね。びっくりしちゃった」
「宮沢とは、同じ部署だったりすんの? 」

 話題はしばらく栄司のことになりそうで、ボロが出ないように慎重になる必要がありそうだ。 
 

「ううん、会社の飲み会で同い年だってわかってから時々ご飯行くようになったの」

 嘘は行ってない、嘘は……。

「へぇ、そっか。会社でも人気あるんじゃない、あいつ」

 ひゅっと息が詰まってしまった。そんなの、当たり前のことなのに。

「うん。いつもお昼休憩は女の子に囲まれてるよ」

 持ち直してそう答えた。