おともだち

「そんなのいちいちチェックしてないよ。向こうも、人の顔覚えるの得意な人なんじゃない」
「そうかな……」

 煮え切らないような多江の返事に、ふっと吹き出した。

「何だよ、多江も可愛いよ」
「は!? 違うから! 私も言って欲しくて言ったんじゃないから! 」
「なんだぁ、焼きもち焼いたのかと思った」
「え、も、ちが、違わないけどっ! 」
「はははは! 違わないのかよ」

 俺が笑うと多江はギッと睨んで俺の手からアイスコーヒーを奪い取った。ちゅーっと飲んでる。え、飲むのかよ。で、三分の一くらい残ったアイスコーヒーを押し付けてきた。

「飲むのかよ」
「ふー、冷たくて美味しい! 」
「あー、ね。ここ、セルフでは一番うまいかも」

 俺もアイスコーヒーを飲みほす。ストローがズッと鳴った。

「週末まで頑張るかぁ」

 多江はそう言って腕を伸ばし、んーと伸びをした。

 その『週末』には俺に会えることもはいっているんだろうか。

「そうだな。どこ行くか、ゆっくり飲むのもいいな。って、いつも通りだけど」
「うん。でもそれ楽しみに頑張ってるから」
「俺もそうだよ」

 言って気づいた、加賀美は?加賀美との()()が限られた時間のランチなんかで収まるわけはなかった。

「ランチも、今度行くときはちゃんと約束しよう」
「あー、いいけど。加賀美は? 今度はいつ会うんだっけ」

 会うだろうと決め込んで聞いてみる。案の定、そんな話が出たのだろう。

「うーんと、まだちゃんと決まってないけど、来週のどこか、になりそうかな」
 やっぱり誘われてるんじゃん。
「ふーん、決まったら教えて」

 俺がそう言うと、多江は明らかに動揺した。