おともだち

 会社までの道のり、多江と歩く。

 会話もなく俯く多江に、何だよ……という気持ちになる。


 ――(またしても)()()会って、一緒に休憩ってなっただけ、らしい。あの女性が空気読んで遠慮しただけ、っぽい。遠慮しなきゃならない状況だった、ってことかよ。

「コーヒー、飲む? 」
 自分のアイスコーヒーを差し出すと、多江はやっと顔を上げた。
「え? ああ。いい、いい。私コーヒーはさっき加賀美くんと飲んできたから」
「そ」

 加賀美と、ね。コーヒーまで飲んできたんだ、そう。苛立ちが胸にかかる。


「栄司は、今日は小柴さんたちとランチしたんじゃなかったの? 」
「……何で知ってんの」
「あ、その……私が外出る時に見えたからさ」
「うーん……何かあのノリについていけなくてさ。今度から行かないって言って先に帰ってきた。で、一人でコーヒーな。テイクアウトだけど」
「そっか。じゃあ、私が栄司と行けばよかったな」

 ……えっと。いいんだ。

「そうだね」

 こんな小さなことでふっと心が軽くなった。
 俺は俺で頑張るしかないか。あと1回呼び出すチャンスは残してあるのだから。

「あの、さっきの、加賀美くんと一緒にいた女の子とは一緒にお茶したりしなかったの? 」

 ……するわけないだろ。何で息抜きで出て来たコーヒー店で知らない女の子と同席しなきゃならない?誰も得しないだろう。

「知らない子じゃん。俺、テイクアウトだからコーヒー受け取って出て来ただけだけど。つか、会釈されて誰かわかんなくて会社の人かと思ってたわ」
「そっか。でも、向こうは栄司のこと覚えてたんだね。可愛い子だったし」

 多江はそれだけ言うとまたうつむいた。……ん?何だろう、この感じ。