おともだち

 セルフのカフェでレジの列に並ぶ。
 一人で座っている女性が俺に気づき軽く会釈をした。

 ……誰だっけ。記憶を辿るが見覚えはなく、だけど俺に挨拶をするということは会社の人だろうと、俺も挨拶を返した。

 アイスコーヒーを手に店を出る。同じくそのタイミングで席を立った女性と出口付近で一緒になった。……これ、どうしたものかと思う。だって。俺からすると全く知らない人なのだから。向こうも意識はすれど話しかけて来る感じではなかった。ただ微妙な距離感で同じ方向へ歩いている、だけ。

「あ……」
 とその女性が溢し、俺を追い抜いた。前にいる二人組に合流する気のようだった。いくらか緊張を解いて一礼でやり過ごす……はずだった。

「お疲れ様です」
「ああ。ごめんな、時間潰させて。じゃあ、またな、仁科」
「うん、ありがと、加賀美くん。また……」

 目の前の女性が多江で、目の前の男性が加賀美で、俺と歩いて来た女性が、そっか、知らないはずだ。加賀美の同行者で前回も加賀美と一緒にいた子か……。

 多江は加賀美に挨拶して、その女性にも会釈して、視線を俺に移したところで目を見開いた。

「お、なんだよ、宮沢じゃん! え、どういうこと? 」

 加賀美が俺とその女性と俺とを交互に指さした。

「さっき、カフェでお会いしただけです! 私のこと覚えてらっしゃらない感じでしたし」

 ぶ、バレてんじゃん。

「俺は、テイクアウトに寄っただけ。そっちこそ、二人そろって」

 出来るだけ感情が顔に出ないように、笑顔を向けた。
 だってよ、同行の女性別行動させてまで二人で何してたんだって、思うだろ。