彼は時々沈黙を気にして口笛を吹く。
 
 あたしは彼の背中に顔を押し付け耳を澄ませる。
 
 彼の鼓動と口笛のメロディーが時々綺麗に重なる。
 
 あたしはその音楽に歌詞をつけたくなる。
 
 ただメロディーに詩を乗せるのではない。

 口のきけない彼の心をあたしが翻訳するのだ。
 
 あたしは更に耳を澄ませる。

 彼の心の声に。