そこまでのやり取りを黙って聞いていた夏樹は痺れを切らしたように話し始めた。
「で?なんで俺の話なんかしてたの?レースちゃん、もしかして俺のこと好きになった?」
「まっさか。たまたま話題に上がっただけですよ。」
矢嶋への自己紹介の口調から一変、美桜はあしらうようにして言った。
「えー、そうなの?それにしては、橋本ちゃんがえらく俺を推してくれてたような気がするけど。レースちゃんの気持ちが揺らいでるから、橋本ちゃんが説得してくれてるのかと思った。」
「まことに申し訳ございません!今の堀越先輩は、私の理想の男性像からかけ離れてるので…」
美桜が冗談口調で言うと、夏樹は意外にも、不貞腐れたような口調で「じゃあレースちゃんのタイプって、どんな男?」と尋ねてきた。
「そうですねぇ。教養があって、誠実で、優しい人ですね。聖人君子を絵に描いたような人がいいです。」
「「聖人君子!?」」
夏樹の驚いた声に矢嶋の声も重なった。
続けて夏樹は大爆笑した。



