「今日はありがとうな、レースちゃん。」
「いえ!こちらこそごちそうさまでした。美味しかったです!」
美桜はペコッと頭を下げる。
「いや、俺の方こそごちそうさま。…レースちゃんとの間接キス。」
「なっ……!!」
美桜が真っ赤になると、夏樹はニヤリと笑った。
「気付いてたんだ?間接キス。」
「た、食べた後に気付きました…」
「なーんだ。間接キスしてもいいと思ったから、食べてくれたのかと思ってた。」
「ま、まさか!!もー、あんまり誂わないでくださいっ」
そう言うと、美桜はプンプンしながら駅に向かった。夏樹が笑い混じりに「ちょっと待って、送るからさ」と言ってきたが「いえ、ここで結構ですっ」と言って改札前あたりで立ち止まって振り返った。
「今日はありがとうございました。えっと…楽しかったです。」
美桜の言葉が意外だったのか、夏樹は少し驚いた表情を見せた。
そして柔らかく笑うと「俺も楽しかったよ。」と言ってポンポンと美桜の頭を叩いた。
「じゃあな。気をつけて帰れよ。」
「はい。じゃあ…また。」
そう言うと、美桜は改札を通って階段へ向かった。
一応振り返ってみると、まだ夏樹が立っていて手を振っていたので、手を振り返して階段を降りてホームへ向かった。



