聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!



「美味しい〜!」


美桜が口を抑えてもぐもぐしながらそう言うと、夏樹は「だろ?」と言いながら嬉しそうに笑った。


美桜はケーキが口の中から無くなった頃、はたと気付いた。


――え、待って。さっきのって間接キスになるんじゃ…


チラッと夏樹を見ると、特に気にした様子もなく、庭を眺めながらコーヒーを飲んでいる。


夏樹は美桜の目線に気付くと、僅かに微笑んだ。


途端に美桜の心臓が跳ね上がる。


ーーか、か、かっこよすぎるんですけど。ってか、よく考えたら先輩と個室に二人っきり?この状況で、緊張しないはずがないし!何話したらいいの??


コーヒーの似合うイケメンに微笑まれた上、間接キスまで…。


経験したことのないシチュエーションに、頭がクラクラする。


美桜は、夏樹から無意識に放出されるフェロモンに負けじと、話題を変えた。