聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!



「うわぁ、美味しそう〜」


美桜がたまらず声に出すと、夏樹が「うまそうだな」と言ってから言葉を続けた。


「桃が入ってるのはこれ。桃が乗ったムース。この前食べたけど、美味かったよ。」


「そうなんですね。桃のムース以外も美味しそ〜どれにするか迷う〜」


ショーケースを真剣に眺める美桜と一緒に夏樹もショーケースを中を覗く。 


「へぇ、この『さくら色』ってケーキ初めて見たな。新作?」


そう夏樹が尋ねると、遥は「あぁ、それね」と言って、言葉を続けた。


「それは4月に入ってから出してたやつだけど、いつもすぐ売り切れてたのよ。だから夏樹くん、見たことないだけじゃないかな。今日はたまたま1個残ってるね。」


「そっか。じゃあ俺これにしよう」