聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!



そこから会話が続かなかったので、そのまましばらく、お互い無言のまま、電車に揺られていた。


チラッと夏樹を見上げると、車窓の外を眺めている。


太陽の光に照らされて、いつもよりも柔らかな印象を放っていた。


――横顔、キレイだな…。


そう思っていると、視線を感じたのか、夏樹もチラッと美桜を見た。


目が合ってしまったので慌てて俯くと、夏樹のクククッという笑いと共に夏樹の肩も少し揺れた。


「な、何か可笑しかったですか?」


美桜がまたチラッと夏樹を見上げて尋ねると、夏樹はぼそっと「ホント、うちの猫そっくり」と呟いた。


「そんなに似てるんなら、写真でもいいんで見たいです。」


「おう、いいよ。なんなら今度うち来る?」


「い、いえ。結構です。」


思いもよらない夏樹の発言に、美桜は少し驚きながら断った。