「デート?あぁ、さっきの話聞いてたの?」
夏樹のその言葉に、美桜はコクコクと頷いた。
「あれは、友達に頼まれてしゃーなしでダブルデートしただけ。」
「じゃあ『また』女の人を待ってるって言われたのは?」
美桜が早歩きで進行方向を向いたまま夏樹に尋ねると、夏樹は「あぁ」と言って言葉を続けた。
「たまに、みなみを待ってる時があるからかな。下校を待つ相手なんて、みなみくらいだし。」
――やっぱり、みなみ先輩とは「そういう」仲なんだ。
「良いんですか?私なんかと帰ってるとこ見られたら、みなみ先輩に嫌われますよ?」
「あぁ、嫌われるとかないから大丈夫。」
「…すごい自信ですね。やっぱりモテる人は違いますね。」
「…ちょっと待って、レースちゃん。」
ぐい、と夏樹に腕を掴まれて、美桜はやっと静止した。
かなりの距離を早歩きで歩いていたので、美桜は息が上がっていた。
対して、夏樹はまったく息が切れていない。流石、長距離走全国3位なだけある。
腕を掴んだまま、夏樹が美桜の顔を覗き込んできた。



