聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!



「へ!?なっ…」


――もーー!また顔が熱くなるからやめてー!


美桜が思わず火照った顔を両手で挟むと、はははっと夏樹がまた笑った。


「わかりやす!やっぱレースちゃんって面白いな。」


――か、誂われている。


ちょっとムッとした美桜は「もう帰ります!」と言ってズンズンと校門の方へ歩いていった。


「あ、おい。待てよ!」


「待ちませんっ!」


後ろから聞こえる夏樹の声は、まだ微かに笑い混じりだ。


ズンズン歩く美桜に、夏樹がサッと駆け寄って追いついてきた。


「まぁまぁ。かわいいって思ったのはホントだからさ。そんな怒るなって。」


美桜に合わせて早歩きで夏樹は言った。


美桜はツーンとそっぽを向いて抗議した。


「他の人にも言ってるんですよね?そういうこと。私、そういうの免疫ないんで、やめてください。」


「まさか。俺、そんなに褒め言葉を安売りする男じゃないし。」


「そうなんですか?でも、しょっちゅう女の人とデートしてるのは本当なんですよね?」