よく考えれば、矢嶋の好意に気付く機会はたくさんあった。



マネージャーの仕事を頑張っている時に、頭を撫でてくれたこと。



プールでも、メッセージのやり取りでも、可愛いと褒めてくれたこと。


菜々と一緒にいるのが楽しいと言ってくれたこと。


浴衣姿の菜々を見て、真っ赤になりながら「綺麗だ」と褒めてくれたこと。


ブレスレットをプレゼントしてくれたこと。


2人で一緒に撮った写真を見て、嬉しそうに笑ってくれたこと。


次から次へと、矢嶋からもらった「好き」が浮かんでくる。


――それなのに私、矢嶋先輩がくれる言葉の意味も深く考えずに、相良君のことを相談して…。自分とちゃんと向き合わずに、気持ちの整理もちゃんとできないままで…。


涙がツーっと頬を伝った。


――私、今までどれだけ先輩のこと、傷つけてたんだろう。


――最っっ低だ、私。