聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!



――ち、近っ!


そう思いながら、矢嶋が持っているスマホの画面を見つめた。


セルフタイマーの音がカシャッと鳴った後、矢嶋が写真をチェックする。


「お!いい感じに撮れてる。」


そう言うと、嬉しそうに写真を見せてくれた。


微笑む2人。手首にはお揃いのブレスレット。
背景には、出店の提灯が映り込み、淡い光を放っていて、お祭りの楽しい雰囲気が伝わってきた。


「ホント、よく撮れてますね。」


「だね。橋本ちゃん、可愛い。」


写真を見て、ストレートに褒めてくる矢嶋の顔は、とても嬉しそうだ。


「…ありがとうございます。」


照れくさくなって少し俯いたまま御礼を言うと、計らずとも上目遣いになる。


矢嶋はそんな菜々を見て、少し頬を赤らめると「写真送るね。ちょっと待って。」と言い、視線をスマホに落とした。


矢嶋がスマホを操作している間、菜々は周囲に目を向ける。


皆、花火が見えるエリアに向かって歩いている。
カップル、グループ、各々楽しそうだ。


すると、見慣れた顔が目に止まった。