聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!


「あれ、ギリギリかも。」


女性サイズなのか、チェーンの長さがギリギリだった。


しばらく苦戦した後、なんとか矢嶋の右腕につけ終わる。


「すみません、ちょっとサイズがギリギリで…」


「いや、大丈夫!マジで嬉しい。」


そう言って、矢嶋は菜々に右手首を見せる。


「どう?」


菜々と色違いの、青色のコードがついたブレスレットだ。


「うん、いい感じです!」


菜々が小さく手を叩いて褒めると、矢嶋が遠慮がちに聞いた。


「あの…さ、よかったら一緒に写真撮らない?」


こうやって、と言いながら、矢嶋はブレスレットをつけた手首を顔の横に持ってきた。


菜々は嬉しくなり、気付いたら頷いていた。


「やった。」


矢嶋は、満面の笑顔でそう言うと、スマホのセルフタイマーをセットして「撮るよー?」と言い、菜々の顔に自分の顔を近づけた。