「お待たせしましたー!」


美桜がそう言って2人の前に立つ。菜々は美桜の後ろから「こんばんは」と言った。


「お、ちょうどよかったな。行き違いにならなくてよかった。」


そう言った夏樹の横で、矢嶋が菜々を見ていた。


「矢嶋先輩、今日はありがとうございます。誘ってくれて。」


そう菜々に声を掛けられ、ぼーっとしていた矢嶋は、ハッと我に返った。


「いや、来てくれてありがとう。」


「こちらこそ。」


そう菜々が言うと、お互い言葉が続かなかった。


――あれ、私、変かな?


「よし、じゃあ行きますか。」


そう言って、夏樹が先頭を切って歩き出した。「美桜、こっち。」と呼ばれ、美桜が夏樹の横について歩く。
夏樹がなにやら耳打ちして、それを聞いた美桜が、夏樹の腕をパシッと叩いている。


夏樹のニヤけ顔、美桜の赤くなった顔を見る限り、夏樹が今日の美桜の格好を褒めたのかもしれない。


菜々と矢嶋も、その後ろについて、改札へ向かって歩いた。