「え!?美桜ちゃん、堀越先輩のこと夏樹君って呼んでるの?」


まさかの親友の進展に、菜々は堪らず両手を口元に当てて、にやけ顔を隠す。


「夏樹君、だって〜!」


「ラブラブだなぁ〜!」


芽唯と里帆も、ニヤニヤしながら美桜を見た。


美桜はハッとして、菜々の横で顔を真っ赤にしている。


「わー!恥ずかしい!!みんなの前では、堀越先輩、で通そうと思ってたのにー!」


墓穴ー!と言って悶える友を、3人はその後、イジり倒して過ごした。


――美桜ちゃん、幸せそうでいいなあ。私もそんな風になりたい。


『…奪ったら?』


矢嶋にそう言われたのを思い出す。


――相良君を、彼女から奪い取る?


そこまでして相良のことを好きか、と言われるとなんだか違う気がした。


それに、彼女がいたという話を聞いた時も、驚きはしたが、その後に泣きはしなかった。


――矢嶋先輩がいてくれたからかな。


相良の顔より、矢嶋の顔が先に浮かんできて、菜々は不思議な気持ちになった。