『ずっと片思いだったの。星原先輩に何人か彼女がいたことも知ってる。でもその度に、先輩悩んでて。どうしてもサッカー優先になるから、すぐ振られるんだって。自分がサッカーしてる限り、彼氏らしいことはしてあげられないって言ってて。』
消灯した部屋の中は、月明かりだけで照らされていて薄暗かった。
神崎は布団から少し顔を出しながら話していて、目元では涙が光っているのが見える。
神崎の、鼻をすする音がやけに響いて聞こえた。
菜々は、そんな神崎を、黙って見つめながら話を聞いていた。
神崎は話を続ける。
『私が2年になってから、星原先輩がよく私を気にかけてくれるようになったの。ちょっとした私の行動で好意が伝わってたらしくて。星原先輩、それに気付いて、それでだんだんと私のこと意識するようになったって。気付いたら好きになってたって言ってた。』
『え!?じゃあ両思いってことですね!』
菜々はおめでとうございます、と言いかけたが、神崎が『でも』と言ったので、言葉を飲み込んだ。



