「よし!とりあえず、俺達も戻ろうぜ。橋本は、2階に何か用事でもあったの?」
「あ、そうだった!部屋にスマホ忘れたから取りにきたの。」
菜々も本来の用事を思い出して立ち上がった。
「そっか。じゃあ俺は先に1階に下りるから。星原先輩と話したいことあったし。」
じゃあなと言うと、相良は軽い足取りで1階へ下りていった。
菜々は相良の姿を見送った後、深呼吸して心を落ち着かせてから階段を下りた。
部屋の前までくると、何事もなかったかのようにドアを開けて中に入る。
部屋に入ると、2組敷いた布団のうち、片方が膨らんでいた。
完全に布団を被っていて、神崎の顔は見えない。
「神崎先輩?大丈夫ですか?体調悪いんですか?」
菜々がそう声をかけると、神崎が布団の下から少し顔を覗かせた。目の周りが真っ赤だ。
「先輩…!泣いてたんですか?どこか悪いですか?」
菜々がそう尋ねると、神崎は頭を緩く左右に振った。
「橋本ちゃん、後で話、聞いてもらえる?みんなに聞かれた時は、私は体調悪くて先に休んでるって言ってもらっていい?」
「…わかりました。伝えますね。一旦下に下ります。」
そう言うと、菜々はスマホを持って、部屋から出た。



