そんなこんなで、まだまだ盛り上がっている夕食会場の中で、菜々は他の部員に呼ばれて話を聞いたりして、親睦を深めていった。
途中でふと、部屋にスマホを忘れたことに気づき、菜々は一時退席して、2階にある部屋へ取りに向かった。
階段を登る途中、2階のフロアから男女が言い合いをしているような声が聞こえてきた。
――神崎先輩…と星原先輩?
菜々は、見つからないよう、そっと壁際に沿って移動し、声のする方を覗き込んだ。
神崎と星原が、何やら互いに言葉を発しているようだが、菜々が隠れている場所が2人から少し離れている上に、ヒソヒソ声なので上手く聞きとれない。
神崎の横顔は、なんだか泣き出しそうな表情になっている。
星原は納得いかない、といった様子だ。
――止めに入った方がいいよね?
そう思って出ていこうとした瞬間、誰かの手で口を塞がれた。



