聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!



――え!?な、何?


急に心拍数が上がったのを感じた瞬間、菜々の次に滑り降りてきた人が、プールに飛び込んできた。


バッシャーーン!


プールに落ちた勢いでできた水しぶきが、菜々と矢嶋にもかかる。


せっかくほぐした髪がまたびしょ濡れになり、矢嶋が「また濡れた!」と言いながら笑ったので、菜々も思わず笑ってしまった。


繋がれていたはずの手は、もう離されている。


――もう少し繋いでたかったな…なんて思ったり。…欲張りだな、私。


ドキドキする気持ちを抑えながら、矢嶋に続いてプールサイドへ向かった。


プールサイドにあがると、なぜか美桜が真っ赤になってプンプン怒っている。
夏樹はというと、ニヤニヤしながらも「ごめんってー」と謝っていた。