聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!




「もうそのビブスいいんじゃね?橋本ちゃんの肘のとこまで泡がついてるよ。」


「へ!?うそっ…!」


菜々は慌てて洗濯用バケツから腕を抜いた。途端に泡が散る。


「わ!ちょっとちょっと、橋本ちゃん。そんないきなり動いたら、泡が飛ぶだろ?ほら、ここにも…」


あははっと笑いながら、矢嶋は菜々に歩み寄り、菜々の髪についている泡を手で払った。


「あ、ありがとうございます。」


菜々は思わずドキドキしながら御礼を言った。


「いえいえ。マネージャー業頑張ってるね。エライエライ。」


そう言うと、さっき泡を払った手でそのまま菜々の頭をポンポンと叩いた。


「せ、先輩…っ!」


照れて思わず真っ赤になった菜々を見て、矢嶋はニヤッといたずらっぽく笑った。


「まあ、あんまり無理しないようにね。」


じゃ俺予備校あるから、と言うと、矢嶋は菜々に背を向けて去っていった。