聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!



「先輩、鋭いですね…。」


菜々が観念したように言うと、矢嶋はまた笑った。


「だって、橋本ちゃんの目線がサッカーボールに合わせて動いてたもん。気づくさ。」


ーーすごい観察力だなあ、矢嶋先輩。


菜々は感心したが、大事なことに気づいて、慌てて口止めする。


「な、内緒ですよ!誰にも言ってないんですから。」


「そうなんだ?わかった。秘密にしとく。」


にっこり笑ってそう言った後、矢嶋は、菜々の手元を指差して言った。