聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!



「美桜ー!レースちゃんって、なに!?」


教室に戻り、美桜と菜々の元へかけよってきた里帆と芽唯が、追い打ちをかけるように尋ねる。


美桜は勢いよく机に突っ伏し、ガンッと頭をぶつけた。


そんな美桜の様子はお構いなしに、芽唯と里帆は2人できゃあきゃあ言って盛り上がっている。


「ねぇ、小さい頃堀越先輩に美桜がついて回ってたってホント!?」


「いいなぁ。昔、ご近所さんだったお兄ちゃんが、同じ高校の生徒で、しかもイケメンで全国大会3位を獲っちゃうくらいのスポーツマン!もう好きになる要素しかないじゃん!!」


どうやら、美桜と夏樹が昔からの知り合いだということを、夏樹から聞き取ってきたようだ。


「美桜、うちら応援するからね!」


「いや、いいよ、応援は…」


「えー?遠慮しなくていいのに。ところで、レースちゃんってどういう――」


「そのあだ名の由来は死んでも言えませんっ!!」