聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!



――またそうやって名前呼ぶ。



――先輩、だからチャラいんですよ。



――だから勘違いするんですよ。



――好きでもないのに、名前で呼んだりするから。



「さっき、なんで泣いてたの?てか、なんで昨日来なかった?返信もないから、何かあったんじゃないかって、俺めちゃくちゃ心配して…」


夏樹が話している途中で、美桜はまた昨日の事を思い出した。


涙が頬を伝う。


夏樹は美桜の涙を見て、一瞬、驚いた表情をすると、美桜の方に手を伸ばしてきた。


心配そうな表情。


――好きでもないのにそんな顔して…


美桜は涙で顔を歪ませながら、なんとか言葉を紡いだ。


「…名前で…呼ばないで。」