夏樹の最寄り駅からでも、美桜の家までなら10キロ近くある。
それを30分かからず走ってきたということか。さすがは全国3位の実力者。
「駅まで…行く時間が…もったいねぇって思って。走った方が…早そうだったから。」
夏樹はベンチに腰掛けたまま足を広げ、そこに腕をかけると、地面を見つめながら呼吸を整えている。
「そんな、急がなくても…」
美桜がまだ驚きを隠せないままそう言うと、呼吸が整ってきた夏樹が、顔を上げた。
ひたいには汗が光って、顔からも汗がつたって落ちている。
夏樹は着ているTシャツの袖で、汗を拭いながら言った。
「そりゃ急ぐでしょ。美桜を待たせてるんだから。」
そう言われ、美桜は思わず固まった。



