自分の教室に入って席につくと、そのまま突っ伏す。
まだ心臓がバクバクいっている。
――ホントにあの人が、私がずっと想っていたお兄ちゃんなの!?
小さい頃から憧れていた聖人君子のお兄ちゃん=堀越夏樹先輩=女とっかえひっかえのチャラ男
頭の中にこんな式が浮かんで絶望した。
――長年の想い人が、チャラ男になってたなんて…。
確かに、言われてみれば面影が無いこともない。
記憶の中のお兄ちゃんも、堀越先輩も、きれいな顔立ちであることに違いはなかった。
それにしても…
「美桜ちゃん!大丈夫?」
追いかけて来てくれた菜々が机に突っ伏した美桜に声をかけてくれた。
「な、ななちーん……」
顔を上げると、泣きそうな表情で美桜は菜々にしがみついた。
「…まさかこの前話したあの人が本人だったとはね…」
しがみついてきた美桜の頭を撫でながら、菜々は呟いた。
美桜はそのままうん、と頷いた。
「あんなデリカシーのない男になってたなんて、ホント冗談やめてほしい…」



