「そうやって、本当じゃない噂もたくさんあるから、それだけは知っておいて欲しい。美桜には…人の噂で俺のこと決めつけて欲しくないから。」


――え!?今、名前…


「とりあえず、行こ。悪いな、帰るの遅くなった。」


そう言うと、夏樹は美桜の手を引いて、駅へ向かって歩き始めた。


スタスタ歩く夏樹になんとかついていきながら、美桜が「先輩!答えたから、そろそろ手を…」と言うと、夏樹はチラッと振り返り、こう言った。


「嫌なら振りほどいていいけど?」


「…っ!」


――そんなこと、したかったらもうしてる…。


美桜は夏樹に握られた手を見つめながら、黙って俯いた。


夏樹は正面に視線を戻し、美桜の手を握り直すと、駅へ向かった。