○学校・表(朝)
登校して来る生徒ら。

〇同・理科室(朝)
誰もいない部屋。
咲良の頭を膝の上に乗せて、頭を撫でている朱莉。
朱莉の目には、咲良が猫化(猫耳、ひげ、しっぽが生えている)しているように見えている。
咲良は、気持ち良さそうに目を瞑っている。
朱莉「碧~」
咲良、照れ臭そうに、
咲良「にゃ、にゃあ」
猫耳がぴくぴく動く。
朱莉(か、可愛すぎる! こんな咲良くん初めて見る!)
咲良「あのさ、前田さん」
朱莉「ん?」
咲良「自分から言ってなんだけど、照れるね」
朱莉「そ、そうだね。私も照れる」
互いに顔を逸らす。
咲良、体を起こして、
咲良「じゃ、今日はこの辺で」
朱莉(えーもう終わり?もっとなでなでしたいのに・・・)
咲良、ドアに手をかけ、振り返る。
咲良「今日も、うち来てくれるんだよね?」
朱莉「うん、もちろん行くよ!」
咲良「良かった。待ってる」
咲良の笑顔。

○同・廊下(朝)
鼻歌を歌いながら歩く朱莉。
六花、萌絵が朱莉の腕を掴む。
萌絵「ちょっと、ちょっと!」
朱莉「萌絵、六花!?」
六花「あんたらどんな関係になってんの?」
朱莉「関係?」
萌絵「知ってるんだからね。理科準備室でこっそり何かしてるでしょ」
朱莉「してないよ」
萌絵「嘘つけー! 怪しい!怪しすぎる!」
六花「不埒だわ」
朱莉「そんな事してません!}
萌絵「じゃあ言いなよ。何をしてるのか」
萌絵、六花、朱莉に詰め寄る。
朱莉「それはただ咲良くんが、猫になってじゃれ合ってるだけで」
萌絵「やっぱり不純異性交遊じゃーん!」
朱莉「そういうんじゃなくて、私が咲良くん家の召使になるお礼に、咲良くんが私の猫になってるの!」
六花と萌絵、ぽかーんとした顔。
六花「意味わかんないんですけど」
朱莉「だよね。私もどうしてこうなったか……」
萌絵「朱莉、ちょっと前まで恋愛から逃げようとしてたのに、推しをペットにするってどういう事!?」
六花「びっくりだよね。朱莉が実は男を手で転がすやり手だったなんて」
朱莉「違うんだって~!」
キンコーンカーンコーン。
朱莉「あ、授業始まる!」
六花、壁ドンして朱莉を止める。
六花「今度、じっくり聞かせなさい」
萌絵も詰め寄る。
萌絵「じっくりとね!」
朱莉「二人とも顔が怖いって」

○団地・台所(夕)
朱莉、料理を作っている。
あお「今日は何のごはん?」
朱莉「さて、何でしょう?」
まお「コロッケ―」
たお「ハンバーグ」
朱莉「さあ、どっちかなあ?」
ガチャ。咲良が帰宅する。
朱莉「おかえり~」
咲良「ただいま、バイトで遅くなった」
朱莉「咲良くんってバイトもしてたんだ?」
咲良「うん、ちょっとね」
朱莉「そっかー、お疲れ様だね!お風呂入る? お湯入れてあるけど」
咲良「ありがとう。入って来る」
朱莉「はーい」
咲良、風呂場へ行く。
あお「おにぃちゃんと朱莉ちゃん、しんこんさんみたいだね」
朱莉「もう、あおちゃん、もっと言って!」
あお「しんこーん」
まお「しんこーん」
朱莉「せーの!」
三つ子「しんこーーーーん」
朱莉「もーう、やだあ」
身をよじらせて照れている朱莉。
三つ子、こっそりと、
あお「言わされてるよね」
まお「うんうん」
たお「たのしいね」
朱莉、置きっぱなしののバスタオルを見つける。
朱莉「あ、やだ、タオル!」
朱莉、タオルを持って洗面所へ行く。

○同・洗面所(夕)
朱莉「咲良く……」
ドアを開ける。
と、咲良がシャツを脱ぐところ。
朱莉、ドアを閉める。
朱莉「あ、ごめん! 見てないから、見たけど!」
咲良「ああ、こっちこそ、ごめん」
朱莉「タオル、見ないように渡すね」
と、目をつぶってタオルを差し出す。
すると、ぐいっと引っ張られる。
朱莉「!?」
朱莉、咲良に抱き締められる形になっている。
朱莉「咲良くん?」
見ると、咲良が猫化している。(朱莉にはそう見えている)
朱莉「碧?」
咲良「にゃあ・・・」
朱莉「どうしたの?疲れた?」
咲良「少し・・・ちょっと、このまま」
咲良、朱莉の肩にトンと頭を乗せる。
朱莉「バイトって何をしてるの?」
咲良「それはまあ・・・お姉さんの相手、かな?」
朱莉「お、お姉さんの相手……!?」

○朱莉の妄想
女性とキスをしている咲良。

○団地・洗面所(夕)
朱莉「ダメ、ダメ絶対! お金のためかもしれないけど、まだ高校生だし、それだけは」
咲良「何を想像してるの」
朱莉「何って・・・」
咲良「ただお互いに汗を掻くだけだよ」
朱莉、さっきの妄想がもくもくと脳裏を過る。
朱莉「汗!?そんなの絶対ダメだよ!!!」
咲良「気持ちいいよ?」
朱莉「やだ、気持ちいいなんて、やだ、そんな・・・」
咲良「今度、前田さんもうちの店に来てよ」
朱莉「へ?」


○街・大通り
朱莉、萌絵、六花が歩く。
萌絵「てか、咲良くんとどうなってるのか詳しく聞いてもよく分かんなかった」
六花「二人の関係って、結局なんなの?」
朱莉「大丈夫。私もそれはよく分かってない」
六花・萌絵「はあ・・・?」
朱莉「あ、ここだ!」
咲良がバイトしている店の前で止まる。
六花「不埒のお店?」
朱莉「違うと思いたいけど」
萌絵「行こう!」


○ある個室
額に汗を流す咲良。
目の前には水着姿の女性が二人。
女性A「碧くーん、こっちもー」
女性B「いやーん、最高!」
咲良、タオルを使って熱波を送っている。
つまり、ここはサウナだった。
隅の方で、Tシャツに着替えた朱莉、萌絵、六花が座っている。
萌絵「これがバイトですか」
六花「これみたい」
朱莉「まさか、熱波師だったとは」
咲良、朱莉の方へ来て、バサリと熱波を送る。
咲良「みんな、どう?」
萌絵「あちぃ!」
朱莉「だけど」
朱莉、咲良の首筋の汗を凝視。
朱莉、キランと目が光る。
朱莉「最高です!」

○カフェ
あんみつを食べる朱莉、六花、萌絵。
朱莉「いや~熱かった!」
六花「でもすっきり、整ったね」
朱莉「ほんと、整いました!さすが咲良くんの熱波!」
萌絵「てか、咲良くん、女性客に人気みたいだったね」
朱莉「それは、何かやだなあ」
六花「お? ペットに嫉妬かあ?」
朱莉「ペット・・・」
朱莉、俯く。
萌絵「何?」
朱莉「咲良くんって、他の人の前でもペットになってたりしてるのかなーって」
六花「えー?」
朱莉「だって、なんか慣れてるし」
六花「慣れてるって?例えば?」
朱莉「それは言えないけど」
萌絵「怪しぃ~」
朱莉、咳払いして、
朱莉「例えば、私以外の女性の前で犬になったり、イグアナになってるかもしれない」
六花「イグアナ……?」
萌絵「私もちょっと思った。咲良くんって、運動も料理も全部が出来て、完璧すぎるじゃん」
朱莉「うんうん」
萌絵「実は、何人もの女を泣かせてる女たらしだった!とかじゃないと、逆に変だよ!」
朱莉「咲良くんが女たらしなんて、それは、さすがに・・・」
朱莉、店の外を見る。
サウナ店から咲良が出てくるのが見える。
咲良「あ、咲良くんだ」
すると、隣には女性がいる。
六花「女の人といる?」
朱莉、ズキンと胸が痛む。
萌絵「お、これで本性が暴かれるよー!」
朱莉「そんなわけ・・・」
女性と楽し気に会話して去って行く咲良。
朱莉(ないよね?)