「どうして……」

 震える喉が、絞り出すように声を出す。
 悲痛な叫びの代わりに吐き出された声はか細く、すぐそばにいた少女ですら聞き取れない。

「サントリナ様? 今、なんと……?」

 告白の返事だと思った少女が、おずおずと尋ねてくる。
 サントリナはそこでハッと我に返った。慌てて少女へ視線を戻す。
 取り繕ったように爽やかな笑みを浮かべ、繰り返してきた文言を口にした。

「あなたの好意は嬉しいけれど、ボクには婚約者がいる。だから、ごめんなさい。あなたの気持ちには応えられない」

「……困らせてしまって、申し訳ございません。聞いてくださり、ありがとうございました。それでは、失礼いたします!」