妖精をも陥落させる剣技は、冬の国の姫までも籠絡する。
 祭りの催しで剣舞を披露したサントリナに、冬の国の姫は恋をした。

「わたくし、サントリナ様が女性でも構いませんわ!」

 そう豪語した姫に、国王は本気で危機感を持ったようで、宰相に命じてサントリナの婚約者を見つけてきたのが三年前のこと。
 相手は、夏の国にある王宮の軍をまとめる総督の息子。申し分ないどころか玉の輿だった。

 総督の息子の名前は、ニゲラ。
 赤茶色の髪に、榛色の目。精悍な顔立ち。なにより目を引くのは、その体である。
 いわゆる細マッチョが主流の冬の国とは違い、夏の国はムキムキマッチョが主流だった。

 初めてニゲラと会った時、サントリナが抱いた感想は「あの筋肉に包まれたい」である。
 付き添いの母がうっかり「暑いわ」と言ってしまうほどに暑苦しいその体に、彼女は恋をした。