ぬるま湯のような体温に、ペリウィンクルのまぶたはあっさり陥落した。

「早く大人になっておくれ。もう待ちきれないぞ」

 完全に落ちる寸前、切実な響きが聞こえた気がしたが、たぶん気のせいだ。
 育ての親のような彼が、そんな声を出すはずがない。

(……寝ちゃうなんて、ありえない)

 そのせいで、ヴィアベルがセリとシナモンに何をしたのか、ペリウィンクルは知らないままだった。
 おそらく、ローズマリーのダイエットの時のように、妖精魔法を使ったのだろうということはわかっても、詳細まではわからない。

 翌朝起きたら自分の部屋の狭いシングルベッドで、ヴィアベルに抱き枕にされていた。
 目を開けて真っ先に飛び込んできた人外じみた美貌に、思わず息を呑んだのは一生の秘密にしたい。

(育ての親にときめくとか、ないから!)

 恥ずかしすぎる。穴を掘って埋まりたい。
 これでは「パパと結婚する」と言っている幼子と同じじゃないかと、ペリウィンクルは朝から頭を抱える羽目になった。